この先、映画「羊の木」について激しくネタバレします。
作品をまだ観賞されていない方は回れ右をおすすめします。
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ネットで映画「羊の木」を観た方のネタバレ感想ブログをいろいろ見て回りました。
いやあ面白かった!
深読みしようと思えばいくらでもできる作品なので、「そういう見方もあるのか!」という感想がたくさんで目から鱗落ちまくりでした。
うんうんうんうんと頭100回ぐらい振りたくなる感想もあったし。(むちうちになります)
へえええええええそう受け取るんだあと興味深く思ったり。
そうやって見ていくうち、わたしがいちばん驚いたのが、宮腰を
「冷酷なところもある」
と捉えてる感想が多かったことでした。
(わたしのネットサーフィン調べ。実際はわからない)(いい加減ですいません)
というのも、わたしは宮腰のことを、全く「冷酷(なところもある)」とは思っていなかったからです。
おそらくこの「冷酷」とは、人を簡単に殺せるところを指してると思うんですけども。
わたしはむしろ、この人無邪気だな、5歳児みたいだなって思いながら見てたんですよ。
嬉しい。楽しい。好き。嫌い。悲しい。腹が立つ。
そういう感情のままに行動してしているんじゃないかなあって。
きっと人を殺すのも
コイツ ジャマ
イラナイ コロス
くらいな感覚なんじゃないかなあって。
乏しい表情で旨い具合に覆い隠されてるところがあるけれど。
だけど、30年以上生きていて、彼は人を殺すことが「いけないこと」だということを知ってる。
知識として。けれども自分では制御できない、どうしようもないことも知ってる。
そこがものすごく切なく感じられたのですよね。
元殺人犯の6人の中で映画が終わるまでに殺人を犯すのは宮腰だけですが、たぶん最大限の理性でギリギリまで粘ったんだと思うのです。彼なりに。
それでもやっぱりダメだった。
自分の生活の邪魔をする杉山に腹が立って、我慢できなかった。だから殺した。
宮腰は月末のことが好きだったんだろうなあ、と。
友情とか恋とか、そういう言葉を全部吹っ飛ばしてシンプルに「好き」。
だから自分が元殺人犯だったことを文に言われても、「コイツ ジャマ」とはならなかった。月末を殺そうとは思わなかった。
ラスト、のろろ様の伝説になぞらえて、宮腰は月末と無理やり一緒に飛び降りたわけですが。
きっとね、宮腰は、助かるのは自分じゃなくて月末だって思ってたんじゃないかなって思うのです。死ぬのは自分だって。
自分の制御できない性質は、死ななきゃとめられない。
そう思ったうえでの、一種の自殺だったんじゃないかなって。
だけど月末のことが好きだから、ひとりじゃなくって月末と一緒に飛び降りたかった。好きな人と一緒に賭けをした。
いやたぶんそこまで深く考えてない。海が見たくて、のろろ様がいて、好きな人と。
おそらく宮腰は、文と一緒に飛び降りることはなかったと思う。
月末だったから。
最初に優しくしてくれて、そして自分の過去を知ったあとでも、自分とまっすぐ向き合ってくれた月末だったから。
…………なんかねえ、ほんとに切ないなあ。
こうやって見ると、この作品は宮腰の幼いラブストーリーという見方もできる(かもしれない)。
映画「羊の木」、もう一回観てみたいです。わたしの宮腰への見方は変わるかなあ。変わらない気がするなあ。
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宮腰は、冷酷か。映画「羊の木」を観て思ったこと【ネタバレあり】
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